勝利の美酒とはよく言ったものだが、浮かれた酒や女の匂いが残る翌日の城内で、我々忍軍だけはいつまでもその余韻に浸っているわけにはいかない。身体や忍び装束に匂いがついては任務に支障をきたしかねず、そのため軍配が上がった戦の翌朝は、風呂や共同洗濯場が混み合うのが常だった。
 野兎を抱いたあの後、私は風呂が混むより前の明け方のうちに薬湯に浸かり、辰の刻いっぱいを睡眠に宛がうことができた。


 「随分とのんびりですね」


 案の定野郎で風呂が混み合う巳の刻。張っていた気を緩ませ、思っていた以上に溜め込んでいた情欲を吐き出せたことで、睡眠時間のわりには目覚めも頗る調子が良い。尊奈門に包帯を巻く手伝いをさせ、新調した袴の腰紐を結びながら起きてきた私に、何かを察している様子の山本がつつくように小言を言った。女中たちが忙しなく大広間に朝餉を用意していく様を立ったまま二人で眺め、山本を見返すことなく返事をする。

 「朝から説教かい?」

 宛がわれた芸者との一夜が尾を引いて指揮官として弛んでいると言いたいのだろう。自分だって昨夜は部下や他の芸者連中と座敷遊びに興じていたくせに。けれど、山本は詳細を知らないのだから無理もない。かと言って隠すつもりはないが、私自ら明け透けに話す必要もない。

 「貴方はタソガレドキ忍組頭なんですから…」
 「自覚はあるってば」

 珍しく随分と夢中になってしまった夜だった。女の嫉妬は女に向く、を体現した丑三つ時。はじめはそんな野兎への情けのつもりだったはずが、気付けば情事にのめり込み、外では空が白み始めていたのだ。
 私の体力と野兎の持久力が当然噛み合うはずもなく、風呂に入るどころか行為の途中で野兎は意識を手放してしまった。無理矢理起こす気にはなれず、ちょうど今は使われていない元客間で事に及んでいたこともあって、私は野兎をその場で休ませることにして自室へと戻った。


 「名月に相応しい良い夜だったねえ」
 「…後腐れが無いようにしてくださいよ」
 「まさか。誰があんな淫売…」


 芸者如きにのめり込むなという山本からの念押しに返事をしかけて口を噤む。本当は、とその先の真実は言わずにおいた。山本が私の側近として忠告する立場にあることは充分に理解している。
 それよりも、抱かれなかった不満を私ではなく野兎にぶつけた芸者。そんな芸者のことを淫売と感じていた自身に少しだけ驚いた。今日まで宛がわれた女や酒に不満を持ったことは一度も無い。山本の言うとおり、芸者であれば後腐れなく終われるし、女の顔をいちいち覚える必要もない。
 だが、昨晩は事情が違った。突如として興味を惹く対象が現れてしまった。それはまるで中秋の名月から落ちてきた兎のように哀れで―そんな風に思えるのも今だけだろうか。催淫薬を盛られたとはいえ、まさかその晩すぐに抱くことになるとは思わなかったが。


 「それで組頭、高坂から報告を受けましたが、昨晩…」
 「く、組頭ー!」


 すると突然、山本との立ち話に第三者の声が混じる。黒鷲隊の三忍が勢いよく大広間に踏み入り、焦った様子で私の元を訪れた。どたどたと忍らしからぬ足音を立て、風呂場に向かう途中だろうか上半身は裸のままだ。あまりの慌てぶりに一瞬敵でも忍び込んだかと思索したが、どうやら様子がおかしい。

 「着衣もせずになんだ騒がしい」

 組頭の御前だぞ。私が口を開くより前に山本が三忍を制する。


 「すみません!ですが旧客間に…」
 「女が!ふ、布団に!」
 「何者でしょうか!?その、」


 消しますか?代わる代わる状況を報告する三忍。最後の五条の言葉に、隣にいた山本と視線を合わせた。いよいよまずいな。


 「何の用があってあの部屋に?」
 「風呂に行こうと部屋の前を通ったら、たまたまくしゃみが聞こえて…」


 じろりと山本に睨まれる。気を失いそのまま眠った野兎に襦袢と布団は掛けて部屋は出たが…さすがに風邪を引かせただろうか。それでもまだ、現時点では野兎との一夜について山本にも気付かれてはいないはず。
 昨晩タソガレドキ領地に現れた野兎。声と、おそらく記憶の一部を失っている彼女の存在を知り得るのは、城内では始めに捕まえた押都と陣左、報告を受けた私だけだ。
 小頭である山本にはおそらく陣左から情報が上がっているに違いない。今し方の山本の口ぶりから察するに「怪しい女が迷い込んでいる情報は受けているが、報告以上のことはわからない」と言ったところか。三忍や尊奈門を含め、下の連中に野兎のことはまだ何も事情を伝えてはいなかった。血気盛んな男所帯。敵か味方かもわからない女の存在を知られると色々と厄介だ。今頃押都と陣左の両名で、野兎が密偵や回し者ではないかどうかを調査している頃だろう。
 ひとまず目を瞑り腕を組むと、私の意図を汲み取った山本がはぁと盛大にため息を吐いた。


 「…お前達、客間に客人がいるのは当然だろう」
 「あ、確かに」


 山本の一言に一瞬で三忍が納得した様子を見せる。あの部屋はあくまで旧客間で今はほとんど使用されていない。そんな部屋に客人を通すものか。少し考えればわかりそうだが、山本の言葉を疑いもしない三忍。普段であればこんなに単純でいいものかと教育的に頭を抱えるところだが、今日ばかりはその素直さに感謝すら覚える。

 「驚かせて悪いね。私の客なんだ」
 「組頭の…そうでしたか!」
 「これは大変失礼致しました!」
 「構わん。それよりその客人をあとで謁見の間に連れて来てもらえる?」

 私の依頼に三忍ははっとして顔を見合わせた。

 「あーそれが…」
 「ん?」

 口ごもる三忍を代表して、反屋が言いづらそうに口を開く。


 「…腰や腹が痛むようで。まだ布団から出られないみたいなんです。その女、首にも痣があって…」


 病でしょうか?そう心配そうな表情を浮かべる三忍。既に野兎本人と接触済みであることに驚いた一方で、大方の状況を察した山本が「くーみーがーしーら〜」と呆れた声音で私を呼んだ。


 「手を出すのが早すぎやしませんか!」
 「はて、何のことかな」


 間髪入れず大広間から離れた私の後ろで山本のお説教が響き渡る。状況を把握しきれない三忍が口から火を噴く勢いの山本に驚愕しているのを尻目に、すぐに野兎のいる旧客間へと向かった。一刻も早く山本から逃げる作戦だ。
 それにしても初心な三忍が心配するほど不調を来たしているとは―やれやれ、野兎には少し可哀想なことをしたかな。思い返してみても心当たりがあり過ぎた。









 火照りきった女体を堪能する。もう幾度かわからない指と舌だけの愛撫に翻弄され続ける野兎。芸者に無理やり酒でも飲まされ犯されかけたと思っていたが、熱を有した原因が催淫薬とは思わなんだ。あの女、一体どこからそんな物を持ち出したのか。足元に落ちていた三本の徳利。あの量を飲まされたとなれば野兎の身体も意識も相当にきついはずだ。

 「っ、はぁ、…ん、くっ」
 「苦しいか?」

 訊きながらどこか楽しんでいる自覚がある。声は出なくとも息遣いは音になった。火傷痕だらけの慕いもしない男からこんな目に遭わせられる屈辱を哀れに思い、はじめは情けのつもりだったが、その切羽詰まった音色を聴きたくてつい責め立てることを止められない。
 膝を立てて開脚させ、その中心部に顔を埋める。ぷっくりと膨れた花芽を舌の腹や先端でべろりと舐め上げたり這わせたりしながら、熟れた蜜壺には二本の指を沈めゆっくりと抽送を繰り返した。紅潮した顔を左右に振る野兎が私の頭を掴んだが、気にすることなく主張した花芽をじゅるると吸い上げ、合わせて指の出し入れを早める。ぐぽっ、ぐちゅちゅぽといやらしい水音が聴覚を支配し、中の肉壁が締め付けられる感覚と同時に二本の指を引き抜けば、ビクンと仰け反った野兎の秘部からびゅぴゅっと潮が溢れ、愛液が尻の方まで流れた。

 「…んうっ、──ッ!」

 顔を上げてでろんでろんになった口元を手の甲で拭う。骨が抜けたようにぐったりとしながらハァー、ハァーと深く息を吐く野兎を眺め覆い被さると、口の端から垂れた野兎の唾液を舐め上げ、あむりと噛み付くようにその唇の柔らかさを弄んだ。今の今まで花芽を含んでいた私の唇に口吸いされ、野兎に自身の女の匂いを否が応でも確認させる。開いた口の隙間から舌を滑り込ませると、野兎のそれとすぐにぶつかった。

 「、んん、っ、…ふ、ぅ」

 にゅるり。くちゅ。べろり。ぴちゅ。
 温かい。涎に塗れた桃色の唇をわななかせ、息継ぎすることさえ許されない野兎の寄った眉根が私の雄を掻き立てていく。意のままになる野兎の痴態に包帯の中で自身の熱が暴発しそうなことに気付いた。このまま座布団の上で続けることは憚られる。私は一度唇を離し、野兎を抱え据え置きされた布団へと移動した。室内でてらてらと怪しく光る互いの唇から銀糸がつぅと一本伝う。

 「下ろすよ」

 掛布団を足で捲り、敷布団の上に野兎の熱い体を下ろす。冷たい感触が気持ちよかったのだろうか、ぼんやりしていた視点が定まり始めた。女座りをしている野兎の縄に縛られ強調された双丘に舌を滑らせ、先端を口に含んで転がしたり甘噛みして楽しむ。そこから谷間、鎖骨、首筋、耳朶の順に薄く吸い上げる。そのたびにビクンと反応する野兎の体。再び呼吸が浅くなり始めた。
 名月は当に沈んだと言うのに、客間の障子からでも外の空が普段の夜より明るいことがわかった。寝間着にしていた着流しの帯を緩め重なり合っていた裾をめくると、褌の上からでもわかるほど勃起していた。後ろ手に結ばれていた野兎の縄を解き、小さなその手を漲る上反りへと導く。その時初めて戸惑いを見せた野兎。安心させるために野兎の手の上に自身の手を重ねたまま行為を続けた。じわりと先走りが染みて、布の上から天辺にその滑りを広げさせるような指の動きを教え込む。

 「そう、っ…上下に」

 そこから剛直を握らせて上下に扱くように誘導していく。
 舐めなくていい。野兎が恐る恐るそそり立った肉棒を口に含もうとしたのを制して、それは芸者や夜伽のやることだと伝えると、野兎は色と不安に揺れた目を私に向けた。自分だけ何度も達し申し訳なさを感じているのかはわからなかったが、奉仕ができないことに不満を感じている。
 それならと私は先刻まで野兎の蜜壺で蠢いていた指二本を、今度はその小さな口に宛がう。

 「舐めろ」

 そう命令すると、はじめは戸惑いを見せていた野兎が意を決するように熟した唇を上下に開き、小さな舌先で指を舐め始めた。もっと舌の腹も使えと促せば、瞑っていた目をこちらに向けて了承するように再び瞼を閉じる。じゅぷ、ちゅぱと私の右手を両手で持ちながら丁寧に舐める舌の感触が、私の腰元にさらなる熱を生み出していく。懸命で健気な姿に、気付けば私も舌を出し、自分の指を嬲り続ける野兎の舌を掬うように舐め上げ、くちゅくちゅとお互いの舌を絡めながら行為を止めさせた。


 「野兎」


 呼吸を整えようと肩で息をする野兎に声を掛ける。ぱっと私を見つめ、薄明りの中静かに言葉を待っている。


 「…見ての通り、私の体はこの有り様だ」


 あちこちに広がる焼け爛れた痕。特に左半身は顕著だった。自身だけの事柄であれば気にすることは無い。けれど今は何者かはわからずとも野兎も女だ。いくら薬で欲情しようとも犯す気は毛頭なかった。
 後悔はないか―私の確認に野兎は一瞬目を見開いたが、すぐに首を大きく左右に振った。熱に浮かされ今更やめられないだけかと疑った時、何かを伝えたくても言葉が出ないことを思い出す。
 すると野兎が私の左手を徐に掴んだ。私の手のひらに自身の人差し指を這わせ何かを切実に訴える。


 い や な や く め 


 「嫌な役目…」


 お わ せ て ご め ん な さ い 


 声に出して読み上げはっとする。野兎は布団の上で頭を垂らした。嫌な役目。それを私に負わせている。十中八九この行為のことを指している。ゆっくりと頭を上げた野兎は申し訳なさそうに微笑んでいた。
 私が野兎に情けを感じたように、野兎自身も私に負い目を感じていた。互いに慕い合う男女ではない。そしてそれを申し訳なく思っていたのだ。形容し難い思いが胸のあたりをぐっと掴む。何と返せばいいのかわからなかったが、せめて今だけは野兎に後悔させまいと雄としての思いが渦巻いた。

 「…野兎」

 野兎の後頭部を引き寄せて耳元に口付ける。首筋に下りて、細く白いそこを今度は容赦なく吸い上げると途端に野兎の体が強張った。無性に痕を残したくなり、構うことなく鬱血痕を散りばめていく。
 後頭部に左手を添えたままそっと横たわらせ、もう片方の唾液に塗れた右手の指を剛直の先端へと塗り込むように擦り上げた。先走りの液も手伝って充分に潤った肉棒を野兎の足の間へと押し付ける。しとどに濡れた秘部は乾くことも忘れて愛液で滑り、宛がうように亀頭を擦り付けると野兎がごくりと唾を飲み込む。けれどすぐには入れてやらず、もったいぶるように亀頭やカリ首で野兎の花芽に刺激を与え続けた。ぬぷりと剛直の先端だけを秘部に出し入れすれば、たまらなくなった野兎の腰が浮き、じょろじょろとはしたなく潮が溢れていく。

 「はっ、っ! ん───〜ッ!!」
 「焦らされても感じたか」

 告げながら、最早準備の整いきったそこに自身の剛直を貫いた。今も熱が滞留する体。それを以ってしても野兎の中は負けじと熱かった。
 規則的な腰の動きで何度も何度も野兎を責め立てる。恥じらい、両手で顔を隠そうとするので敷布団に縫い付け阻止する。懇願するような視線とかち合えば、どちらからともなく唇を吸った。くちゅくちゅと上からも下からも淫靡な水音が響き、ますます刺激に敏感になっていく。
 上体を起こし、縫い付けていた野兎の両手を交差させ左手だけで拘束すると、両腕の間で律動に合わせて双丘が揺蕩う。たぷんたぷんと揺れる胸を右手で荒々しく揉みしだき、視覚も聴覚も色欲に塗れ、私自身も高みへと導かれていく。一度野兎を果てさせようと、右手人差し指の腹で花芽を捏ねた。その瞬間中の肉壁がぎゅうと剛直を締め上げる。花芽を指の腹で撫で続けると、飛沫の勢いで中に入れた己の肉棒が飛び出した。亀頭に上壁を擦られ、野兎の気持ちのいいところを掠めた。びくびくと今まで以上に快感に腰を震わせている。

 「ふ、んんっ!───〜ッ!!!」
 「っ、…ふ、まだ、だ…野兎」

 まだぐったりとした様子の野兎の太腿を撫でながら膝の裏に手を入れて引き寄せる。どっと蜜が滴るそこに再び自身の肉棒を埋めて徐々に動きを深めると、野兎が強く目を閉じようとしたので瞼に口付けた。

 「目を傷める…っ、力を、は、っ抜け…、」
 「は、…はぁ、…っ、ん、ぅう」

 瞼から頬、唇を経由して上体を起こす。腰を深めたまま奥に奥にとさらに打ち付けると、野兎は紅潮した身を捩り、首筋を強調させるように息を飲み全身を震わせた。その締め付けにいよいよ私自身も高みが近くなり、野兎の腹の上に精を吐き出す。上を向いた野兎の首筋をぢゅうと強く吸い、彼女の体に覆い被さりながらぜえと肩で息をする。背中にはじんわりと汗をかいていた。
 野兎は既にぷつりと糸が切れたように動かず、ぐったりとその両目を閉じている。辛うじて呼吸はあるようだが意識を手放したようだ。汗で額に張り付いた前髪をそっと払ってやる。私はどうも野兎のこの寄った眉根に弱いらしい。その証拠にたった今達したばかりの剛直は硬くそそり立ったままだ。

 「……野兎」

 白み始めた外明かりだけが入るこの部屋で、呼びかけても返事はない。
 生まれつき兎には声帯が無いとされるが、もしも野兎に声があればどんな風に啼いただろう。そんな興味を持った自身を窘めながら、野兎に襦袢と布団を掛けてやる。後処理を済ませて私は旧客間を後にした。








 山本から逃げるように訪れた旧客間の前に着くと、ちょうど襖が開き野兎と出くわした。私の胸元にぽすりとぶつかり、野兎がゆっくりと顔を上げる。けれど鼻の頭を赤らめながら視線が合うなり、その瞳を見開いてすぐに顔を俯かせる。

 「おはよう。加減は?」
 「……」

 調子を確認する私の声に俯いたまま頷く。首筋には昨晩付けた痣が咲き、白い野兎の肌によく映えていた。頑なに顔を上げない野兎の腕を掴む。その耳が赤く染まっていることに気付いた。

 「…今更恥じらっているのか」
 「!」

 その言葉にばっと顔を上げたかと思えば再び俯いてしまう野兎。図星のようだ。私はふぅと一度息を吐く。
 ふと、生娘じゃあるまいしと冗談めかして突いたつもりだった。きつく睨まれるかと反応を予想したが、思わぬ沈黙が流れる。すると、それまで以上に野兎が耳を赤らめ、しまいには首まで真っ赤にしていた。

 「……おい」
 「……」
 「もしかしてお前…」

 生娘か?そう問おうとした瞬間、一文字目の「き」の時点で口当ての上を野兎の両手が覆った。真っ赤な顔でその目には涙を溜めている。あまりの迫力に「その言葉」はもう口にしないという意味を込めて一度頷くと、意図が伝わった野兎の両手が口当てを離れ静かに下ろされた。
 私は額に手を当てて文字通り頭を抱えてしまう。野兎が生娘であった事実に、もうどうしたって元に戻してやることができない罪悪感と、この先どんな男に抱かれようとも野兎の初めてを手に入れたのは私であるという高揚感。二つの相反する思いが混在している。

 「あー…野兎」
 「……」
 「…とりあえず、風呂にでも入ってきなさい」

 そう言ってひとまず入浴を勧める。昨晩風呂に入れる状態でなかった野兎もその意見には小さく頷いた。私は近くにいた女中に声を掛け、女湯と代わりの小袖の準備を促す。


 ―後腐れが無いようにしてくださいよ


 女中に連れられ風呂へと向かう野兎の背中を見つめながら、頭の中で山本の説教が木霊していた。







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