種類さえ知らない樹木のすぐ下に抱えていた猫を一旦寝かせると、勝手ながらそこに埋めようとは袖をまくった。制服はもう幾分猫の毛や怪我から流れる少量の血がこびりついていたけど、息をしないこの猫を思えばそんなことはほんの些細な傲慢な考えだと行き着くので不思議だった。しゃがみこんで何か土を掘り起こせるようなものはないかと辺りを見渡したけど、目に入ったのは小脇に抱えていた学生鞄くらいでそれらしいものは何一つ見当たらない。仕方が無いかとため息を吐くと、は長年遠ざかっていた泥遊びを思い起こしながらその手を泥にまみれさせた。連日の雨は茂みの中にまでその影響を及ぼすようで、樹木からは葉についた水滴が風に揺らされるたびはたはたと零れ落ちてくる。見上げると、背丈はそれなりだが立派な木であることが見てとれた。少なくとも頭や頬を濡らす水滴がにわか雨程度には感じるほどの。自分の今の行動を隠す盾代わりのような背の低い植物たちも、同様に水気をたっぷりと含んでとても喜んでいるように見える。普段なら苦手そのものを形にしたようなかたつむりやなめくじも、今日ばかりは猫の死を労わる同じ生き物に思えて、その隔たりがすうっと消え失せていく感覚があった。泥まみれになりながらせっせと穴を掘る。それだけ見れば誰もが違和感を感じる行動だったが、彼らのおかげでとても心強い気を持ってして両手が動かせる。ちらりと猫を見つめると、は、人間の死よりよっぽど寂しくないのかも知れないとその猫に微笑んだ。こうして種は違えどたくさんの生物が自分と同じ生を持つ者に対する死を思いやっているように見えたからだ。もう少し待っててね。猫と自分に言い聞かせながらは穴を掘り続ける。爪に入った大量の土に構うことなく。