突然だけどわたし、飛影さんがすきです。いやもうほんとすきで困っています。あまりの想いにこのあいだ授業中つい ぼーっとしてしまい先生に怒られたことは言うまでもありません。でも先生はいかに彼がかっこいいかを知っているわけ ではないので仕方ないと思ってすみませんとわらってごまかしたんだけど、でもそんな気持ちのないすみませんは すぐにどこかへ消え失せて、わたしの頭の中は飛影さんでふたたびいっぱいになった。頭だけじゃない。生きているわたしの なかのきっとぜんぶが。飛影さんの特にどこが好きかと言われれば「知り得るすべて」としか言いようがないほど末期で あることは自負しています。でもよくよく考えて細かく思い返してみると、あのとても強くてわたしになんか全然興味がないところかなぁ。 自分で言ってて悲しい。でもこんなにすてきな想いをくれる彼はやっぱりどうしたって愛しくて大すきだった。 飛影さんの為ならわたしはしんでしまったって構わないんだ。我ながらすごいばかだと思うけど、 (何より飛影さんがわたしの命を簡単に受け取るとは思えないけど)飛影さんがかぐや姫とかだったらわたし蓬莱の玉の枝も 火鼠の皮衣も仏の御石の鉢も燕の子安貝も龍の頸の玉も全部取ってきて、さらに月よりの使者にもどうにかして帰って頂いて 彼を守りたいです。そう浦飯くんや蔵馬くんや桑原くんたちに話したら有り得ないことだと笑われた。ありえないって、 飛影さんがかぐや姫じゃないことかと思ったら「飛影は守られるより守りたがるよな」ってそっちのことでした。 全員一致で頷き合っていて、仲間内にそんなことを思わせる飛影さんをさらにすきになったのは言うまでもない。


「かっこいいな…いやほんとに」


ベッドにもぐると誰に言うでもなく呟いた。飛影さんのうすいくちが、たまにわたしをと呼ぶのを思い出す。沁みこむような低く響く声音がたまらなくすきで、初めてなまえを呼ばれたときはというじぶんのなまえがこんなにも甘くなるなんて知らなかった。浦飯くんたちも飛影さんになまえを呼ばれると ドキッとするのかなと聞いてみたら「そんなわけねえだろ気持ち悪ぃ!」って舌を出して否定されたっけ。(き、気持ち悪い?) でもよく考えればそれはそうだろうと思う。だって彼らは戦友で、わたしの想いとは決してべつのところにあるんだ。 そしてわたしはそれを大事にしている飛影さんがすきなんだ。だからきっと呼ばれるなまえだって甘くなったり、 時には苦くなったりする。すきなひとに呼ばれるじぶんのなまえがすきだと思う。他の誰にも感じないものだ。もしもわたしが そうであるように、飛影さんもわたしになまえを呼ばれるとじぶんのなまえがすきだなぁなんてふと思ってくれたらもう最高だ。 ほんとうにしんだってかまわない。そうなるにはまだまだ道のりは長そうだけど、そのためになんでもできてしまうのも 自負しているところだった。それなのにじゃあなぜ飛影さんがかぐや姫だったとして蓬莱の玉の枝も火鼠の皮衣も仏の御石の鉢も 燕の子安貝も龍の頸の玉も全部取ってきて、さらに月よりの使者にもどうにかして帰って頂いて彼を守りたい気持ちは真実なのに、 言おうと思えばそっくりそのまま飛影さんの前でだって言ってのけるのに、わたしのくちはたった二文字のいちばんの想いを 紡ぎ出せないんだろう。どんなに長いあいのことばだって、この二文字には敵わないのに。








ユニファー









ブルーの憂鬱





(眠る前はいつもあなたのことを想うよ)//20080601