俺は総てを





手に入れる
「どうしてなの、クロロ


そう言ってるみたいだった。酷く眉根を寄せて捨てられた子犬みたいに縋りつくに、正直俺は今までのすべてを吐き出して今すぐにでも押し倒してやりたかったし、めちゃめちゃにしたい衝動に駆られた。 けれどそれは至極他愛もないことで、今はまだそうしてやるべきではない。俺はそれをとてもよく熟知していたし、何よりそうしてこなかった 現在までの何もかもが水の泡になるから、だから俺はいつだって彼女に冷たくし、ふいをついて優しくもした。それはすべてを 手に入れるまでの前戯。もっともっと、が俺無しで生きられなくなるまで、もっと。俺は自分に言い聞かせるみたいに心底楽しんだ。といえば街で一番の美人というわけでも家柄がどうということではない。それなのに逢った人間すべてを骨抜きにする それはそれは恐ろしい魔力があった。だがそれは俺が勝手に付けただけの名詞であり、能力の一部だとか特殊な種の生き物な訳では決してない。 無論彼女に魔の力が備わっているわけでもなかった。そしてそこが一番の、彼女の恐れるべき厄介な部分なのだ。これまで自分もよくこの未知の力と やりあってきたものだと感心する。人間が目に眩む財宝も、欲を掻きたてる金品も、幾度となく見てきたはずなのに、これだけは何よりそそられた。 自分がむきになっていることに気付く頃には、俺はもう。

「何がだ」

しらを切るかのように冷たく言い放つ。その度哀しそうな顔をして俺の服をぎゅっと掴むの小さな指。力が入りすぎたソレは可哀相なくらいに白くなっていて、彼女の知りえない部分でくつくつと笑った。ああもうそろそろだ。 俺の中の確信がそう告げた。黒い、暗い。なあ、盗賊が欲しいのは宝だけじゃない。それが手に入るまでの臨場感だ。そう心の中で優しく呟いてやったのに、にはまるで聞こえない。かわいそうに。俺は今、とてもとても優しいんだよ。お前の欲しい優しい俺がここにいるのに、 それに気付けないはなんて綺麗で、儚げで、かわいそう。性欲にも似た支配欲がじわじわと背中を走った。



なまえひとつ呼んだだけ。これまでのすべてが無駄じゃなかったと、本当に、報われるよ。気味の悪いくらいここまで予定通りとは少し世界を疑った。飴と鞭、けれどには有り得ないほどの時間と決意を注ぎ込んで、俺はそうしてやったのだ。だからそろそろ

愛してる

今度は俺の番。



BLACK●●●●


BLUE
魅入ってしまったのは俺の方なのに (20070609)