真面目なようでいて背を向けると手招きしてる。隙がないようで指の間からこちらを覗いてる。大人しいんじゃない。興味がないわけでもない。薄い唇が描く弧を彼女は誰にも見せないだけだ。こんなに近くにいたのに。こんなに近くで見てきたはずなのに。その実、真の正体を誰にも悟らせない。
 さんはオルゴールだ。蓋を開けたときは誰にでも弾んだり朗らかな音楽を奏でながら、閉じた後は誰にも聴かせない音色を演奏している。



 「…夏油、く……」
 「私が暗闇が苦手だってこと、誰にも言わないでねさん」
 「ん、……わかってる…ふ、ぅ」

 決して清潔な空気が漂わない空間で背後に回していた腕を解くと、壁際にさんを押し付けた。暗闇が怖くて呪術師が務まってたまるかと思う。私も彼女の抱く牙の部分を知らなかった。でもそれはさんとて同じことだ。私のことをわかっているようでわかっていない。今日まで私が持ち合わせていた感情に気付いてさえいなかったんだから。
 軍手を外して少しだけ湿った手で彼女の頬を包み込むと、おもむろに火照るその唇を塞いだ。ぬるりと熱い舌で口腔内を犯しながら、さんの舌を絡めとる。

 「ふぁ、はっ、ぁ……」

 唇から顎、そして首筋を舌先で追いかける。びくりと微弱な快感がさんの体を震わせた。濃紺の制服の上からでもわかる彼女の胸の膨らみを、今までそうできなかったことに八当たるよう鷲掴みにすると、さらに細い体が脈打った。制服の下に手を忍ばせて外気と快感で既に立ち上がっている突起を指で摘み上げ、コリコリとすり潰すように執拗に擦る。

 「…今から私に、どんなことされると思う?」
 「やぁ、ん、うぅ…っ!」

 想像して。耳元で囁くとさんの口から熱に浮かされた吐息が漏れた。我慢できないといったその声音がいとしくて、ちゅ、ちゅ、と首筋に吸い付き、そのまま耳の輪郭を舌で舐め上げ、穴の中に差し入れる。じゅぷじゅぷとわざと音を鳴らして抜き差ししながら、小花柄の可愛い下着をずらし、突起を露出させてシャツの上から指先でピンッと弾いて弄んだ。

 「ここ…、尖って、可愛い」
 「あ!んんっ、やっ、ぁん!」
 「私にえっちなことされると思ってたんだ?」

 弾いたり、強めに摘んだりしてしつこく攻め立てながら、片方の手をスカートにかけてジッパーを下ろす。ぐしょりと湿り気を帯びている下着を半ば強引に引き下ろし、さんの片足を持ち上げるようにして下着と一緒に抜き去る。同時に自身の足を間に差し入れ、ジャージと下着を太腿まで下げた。

 「ま!っ…て、ぁあっ…ん!ふ…っ、ぁあ」
 「…もうぐちょぐちょじゃない」

 くにくにとさんの蜜壺に浅く指を差し込んでいく。誰も来ないことなんてわかってるはずなのに、昂ぶりに焦らされて息が切れる。それでも止められない。止められるはずがない。ずっと想い続けていたさんのこんな姿を見て、一緒に秘密を共有できるなんて。彼女も私とそう在りたいと願ってくれていたなんて。そんな機会を見逃すような腑抜けじゃない。
 壁に押し付けるようにして手をさんの太腿に当てて持ち上げ、自身の昂ぶりを宛てがう。既に硬くそそり立ち、だらし無く先走りを垂れ流していた。ぐぐ、と腰を押し進める。慣らしてもいないさんの秘部はなかなか私の剛直を呑み込む事が出来ず、焦らされていると感じたさんが悩ましげに眉間に皺を寄せ目には涙を溜めていた。その様子に心臓が掴まれたかのような強い快感を覚える。すぐに指でさんの花芽を捉え柔らかく擦っていく。そして服の上から胸の先端を口に含み、そのまま吸い上げ甘噛みした。

 「っ!あぁ…っ、んんッ!!」

 とぷりと秘部からぬるついた液が溢れ出し、いよいよ私のものを咥え込んでいく。ぐぽりと肉壁を掻き分けながら根本まで収まりきると、床に着いているさんの片足がぶるぶると震えていた。

 「ふ、ぅう……っ、げと、…く、の……はぁ、っお、っき…っ!」

 言いながら無意識に私の首に回していた両腕に力が入る。その台詞にその行動は私を煽っているようにしか聞こえない。でもきっとさんにそんなつもりはない。それがまたかえって煽情的でたまらなくなる。

 「くっ、……もっと奥、入れるね…っ」
 「ま!っ…て、ふあっ、ぁああ──〜ッ!!!!」

 さんの一瞬の戸惑いも意に介さず、いきなりもう片方の足を軽々と持ち上げた。壁と私に挟まれる形で宙に浮く。自重によって、私の硬い先端が先程よりもさらに奥を暴いていった。

 「っん、あああっ!やぁ、んん──〜!!!ぁ、ひ、ぃ…、っ」
 「……は、……ん、っ!」

 ガクガクと全身を酷く震わせ仰け反りながら、さんの口の端から唾液が伝っていく。そのあまりに強い締め付けに、私は奥歯を噛み締めて耐える。このままイければ幸せだ。でもまだまだもっと堪能したい。さんを独り占めしたい。そのまま上へと突き上げるような腰使いで律動を始めるとさんが嫌々をするように頭を左右に振りながら、私の腕に必死にしがみついた。最早されるがままだ。

 「あっあっぁ!ひっあぁ──〜ッ!!ふかっ、お、おく!ぁあん…!!」
 「っさ、…っ、」
 「ぁあ!!んっ、ダメ、っ、も…らめ、ぇ──〜っ!!!!」

 さんのはしたない声が聴きたくて私はひたすら自身をさんのその細い腰に叩きつけた。何か返したくても荒波のような快感を叩き込まれて叶わない。さんは口からは意味の無い言葉しか発せない。私のせいで狂おしいほどの絶頂に抗えない彼女が可愛くて仕方がなかった。
 ぐじゅぐじゅと耳を塞ぎたくなるほどの音を下腹部からさせ、さんの頬にぼろぼろと涙が滑り落ちていく。その様を私はうっとりとした表情で見下ろした。

 「…はぁ、……さん…、気持ちいいとこだった…?」

 繋がったまま優しい口付けをする。さんは息も絶え絶えだ。

 「…私、まだイってないから、…もう少し、付き合って…」
 「はぁ、は…んっ!夏、油…くん、っ、…この体勢、も、やぁ…っ」
 「大丈夫。また気持ちよくさせるから……っ」

 2人の息遣いと嬌声、肉にぶつかる艶かしい水音だけが響いていく。時折感極まったように唇同士が重なり、舌を絡ませ合いながら、互いの身体に手を這わす。
 抱えたさんの内膝に唇を寄せ、ぢゅううと強く吸い上げる。白い肌に赤い花が刻まれるその行為にさえ、さんはビクンと身体を震わせてしまう。

 「や!っ、ダメ、ううっ、んん──〜ッ、そこダメ…っ!」

 再開した激しい律動に、強度もその大きさも変わらない私自身にさんの内部もまた強く絡みついた。奥の上の方を硬い先端で押し上げる。余りにも強い快感に頭の中が靄がかかったように何も考えられなくなった。

 「や、やっ、はげし、…ぅんっ!もっ、そこ、…ぐっ、んん、や、っあ、ぁああ!!」
 「は、…、逃げ場ないの、っ、好きなんだ…」

 さんは二度目の絶頂を迎える。その最中も私は彼女を攻め立てた。激しい締め付けに抵抗するように、己のものを引き抜き、押し入れ、じゅぽじゅぽと容赦なく掻き回す。
 必ず、別れるから。信じてほしくて何度も告げた。銀糸を途切れさせ、ただひたすらにまた繋ぎ合わせ、理性を失ってそれしかできなくなった生き物みたいに唇を求め合う。小さな舌を吸い上げながら、はしたない声ごと抱き込むように、今度は同時に絶頂まで駆け上った。締め付けるひだを堪能し、自身を幾度も擦り付けながら自分も後を追う。
 そうして、濁った欲望の証をさんの腹の上に吐き出した。


 「…恥ずかしくて、誰にも言えない秘密だね」


 ずっと待ち望んでいた。やっと二人、本当の意味で繋がれる。





有の侭には戻れない