この広く暗い森の中で、が不安を感じている―想像しただけで何も考えられなかった。オーラを纏い、ゴンとビスケの声を振り切って、ただがむしゃらに足が動いていた。深くて暗い夜の森。ひたすらに五感を研ぎ澄ませて彼女を捜した。最初に役に立ったのは視力だ。不釣り合いな足元に転がるバスケットとパン、そしてさっきまで履かれていただろうブーツ。次に聴覚、川の水音の後ろに聞こえる何かが走る音。唸り声。だと確信した。電気を全身に巡らせた。その瞬間からようやく自分の体の中で血が巡りだしたと言っても過言じゃない。それほどまでに余裕がなくて、の腰に手を置き、感電しないようにもう片方の手から電力を放つ。間一髪で獣が後ろに吹き飛ばされた。

 「き、きるあ、く…」
 「ごめんな…怖い思いさせて」

 憔悴したを見つけた。それまで支配していた恐怖からの解放と、驚きと喜びとごちゃ混ぜの視線と目が合う。それなのに、どうしてこんな思いが疼くんだろう。いとしくて大切で守りたいはずなのに、安堵が独り占めにしたいと低く囁く。それは少し苛立ちにも似ていた。




addicted to you.




 やさしくなんかできないと思った。

 「きる、ぁ、く」
 「

 町に戻るなり、心配していたビスケやゴンが駆け寄ってきた。けれどオレはを抱えたまま大丈夫だとだけ告げて2人の間をすり抜けた。キルア!と呼ぶ声もそのままに、怪我をしていたを部屋まで運ぶ。主人不在でしんとした彼女の家はしっかりと冷気が占領していた。扉を足で蹴り開けると、手当よりも先にベッドにを押さえ付けた。どっと押し寄せた疲労のせいで眠気に誘われていたが驚いたようにオレの名を呼ぶ。その唇を思いきり塞いだ。

 「…んぅ…っ、」

 熱い舌で唇を割り開き、小さい彼女の舌を絡めとった。くちゅりと水音がお互いの聴覚を刺激する。眠りかけのにはとても苦しそうだ。そんなに構うことなくオレは服の中に手を差し込んだ。

 「ぁっ…!」
 「悪いけど容赦しないから」
 「んっ」

 思ったより低く響いたその言葉に、が眉根を寄せてオレを見つめる。そんな目で見つめることがただただ導火線に火を点けるだけだとわかってないんだろう。下着をぐいとたくし上げ、形の良い膨らみに手を添える。眩しい白い肌が晒されて小さなピンク色の突起に堪らず舌を這わた。反対側は指でつまみ上げて執拗に愛撫する。部屋の寒さもの過敏な反応にさらに拍車をかける。空いた片手でスルリと薄い腹をなぞるとの両足に力が入るのがわかった。けれど、怪我の痛みを蘇らせたのか、「っ…」と声にはならない声を上げてすぐに片足の力が抜ける。抵抗しても痛むだけだぜ?の耳元に口付けながら囁く。唐突な刺激に追いつこうとするしか出来ないんだろう、艶のかかった吐息が漏れるだけだった。

 「んっ、あっ…やっ!」

ぴちゃ、と吸い上げるたびに腰が跳ねる。くり、と摘まれる度にぞくぞくと身震いする。茂みの奥の蜜壷はしとどに濡れていた。それだけで自分の口許が弧を描くのを止められなかった。オレの手でが感じている目の前の事象が、背筋に電流が走るような感覚を覚えるほど嬉しく、興奮剤となる。怪我した足をこれ以上傷付けないように、でも強引にそこを割り開いていく。ぬめりを帯びながらすぐに根元まで指を飲み込んだ。すると子犬の鳴き声のような嬌声が口から飛び出て、が思わず唇を噛む。声出せよと言ってオレがもう一方の手での唇をこじ開け、そこにも指を差し込んだ。

 「ひゃ、う…ま、って・・・ま、や、あ、あぁ…っ!」
 「やめない。心配させた、罰、な…っ」

 を見つめながら指を2本に増やして激しく抽送を繰り返すと、耳を塞ぎたくなるような辱めの音が木霊した。は快感から逃れたくて顔を振ろうとしても、口にも差し込まれたオレの指に邪魔をされて身動きが取れない。口元の指を外し、空いたその手で奥の部分と一緒に入口の突起を親指で押し潰しながら掻き回すと、の背中が仰け反った。

 「ぁっ、はぁ、ん!イく…ぅっ!」
 「…っ…イけよ」

 ずるりと上から指が引き抜かれていく。はそれを見送る余裕もないほど、はあ、はあ、と必死に酸素を取り込もうと口を開けていた。湿ったその手で自身の腰元にあるベルトを外すと、カチャリと金属音が響いた。くちゅくちゅと熱を持つ硬い先端がの蜜口を擽りながら、その狭くぬめりを帯びた場所へ潜りたいと脈動している。一度大きく息を吐き出した瞬間、入り口をなぞっていたそれをゆっくりと奥に挿入する。中を拡げていく大きさにも必死に呼吸を繰り返しているようだった。

 「っ…く、」
 「あぁっ、き、ぁ…く、んっ」

 間髪入れず腰を引く。そしてまた一気に叩きつけた。2人の息遣いと嬌声、肉にぶつかる艶かしい音だけが響いていく。最早されるがままのと時折感極まったように唇同士が重なり、舌を絡ませ合いながら互いの身体に手を這わす。吐息と共に形にならない名前を呼ばれ、躊躇なく奥の奥まで挿入すると、中で熱いものが勢いよく弾けた。ビュクンッと音が聞こえるような気がするほど、オレはさらにグリグリと押し付けた。もまたぶるりとその身を震わせながら、熱い飛沫を必死に受け止めていた。

 「ーっ!!っあぁ、ん!!」

 一度達した事で少し余裕を取り戻していたオレはゆるゆると再び腰を動かし始める。痛まぬよう抱えたの太ももに唇を寄せ、強く吸い上げる。吐き出したものをまた掻き出すように再び激しい律動が始まる。強度もその大きさも変わらないオレ自身に、の内部もまた強く絡みついた。奥の上の方を硬い先端で押し上げる。余りにも強い快感にすぐにまた何も考えられなくなった。

 「キ、るっ、はげし、っ!もっ…そこ、やっあ、あっぁあ!」
 「、ここがいいんだ?」

 2度目の絶頂。

 その最中もオレはを攻め立てた。止めてなんかやらない。どれだけ心臓が止まる思いだったか―いや、それがわざとじゃないことくらいわかっている。けれど、この感情をぶつけずにはいられなかった。激しい締め付けに抵抗するように引き抜き、押し入れ、容赦なく掻き回す。続け様に3度目を迎え、一瞬の呼吸が止まった。同時に物凄い勢いで中にあるオレ自身を締め付け、再び勢いよく白濁色の精を吐き出した。


***


 暫くお互いの荒い息遣いが絡み合う。の首筋に顔を埋めた。肌に唇を寄せて何度も吸う。そうして気だるい余韻に浸っていると、

 「…?」

 目を閉じたが微動だにせずにいる事に気付いた。思わず苦笑して、ゆっくりと埋没しているものを引きずり出す。すぐに後始末をしてシャツを羽織ると、2人の熱気で窓ガラスが曇っていた。だいぶ欲望のままにの身体を求めてしまった。今のうちに足の手当てをしようとベッドから離れようとしたその時、の細い手がオレのシャツの裾を弱弱しく掴んだ。

 「…キル、ぁ…く……」
 「
 「……ごめ、…なさ…」

 今にも消え入りそうな掠れ声でが言った。その目は情事の後だからなのか、それとも言葉通りの感情からか濡れている。自分の感情を押し付けたのはオレなのになんでが謝るんだろう。の優しさが今になって良心を突く。掴まれたシャツからの手を引きはがすと、すぐに自分の手と繋がせた。そっと甲に唇を落とす。

 「…スゲー心配した」
 「…ん、…」
 「誰かさんのせいで頭真っ白になった」
 「ごめんなさ…」
 「がいない世界なんてどうでもいいからオレ」

 ガキみたいな言葉だと自分でも思う。は少しだけ嬉しそうに笑って「わたしも……キルアくんがいないと、…やだ…」と言った。それを見て身体が熱くなるのを感じる。でも先程のような激情ではない。もっと深い所から湧き上がるような、それでも持て余してのたうち回りなくなるような、そんな熱情だ。オレに死にそうなくらい心配をかけるには同じ想いを共有させないと気が済まない―暴発しそうな自分の矛を誰より手懐けているのも、まただ。